肝芽腫のあっちゃん闘病記

福島の小児甲状腺がんを米国と比較

米国における過去30年にわたる小児甲状腺がんを調べた論文が2011年に発表されていたので、今回の福島の件と比較してみた。最後に和訳を掲載した。

論文の要約

  • 触知可能な甲状腺結節は成人の4~7%において診断され、一般的に良性の腫瘍です。その中で、ごく一部が悪性の腫瘍となります(成人で5%)。
  • 小児甲状腺がんは、全小児がんの1.5から3%を占める。
  • 放射線被ばくが、甲状腺がんの原因になることが、チェルノブイリ事故を含む過去の研究からわかっている。
  • 小児の甲状腺がんは、年齢とともに上昇する。(結節からの悪性への進行割合は、6才以下で5%、7-9歳以下で10%、10歳以上では更に大きく上昇)
  • 18歳以下の高い甲状腺がんの発生率は約20万人に1人(女子0.89/10万人 対 男子0.2人/ 10万)であることが確認されている。
  • 過去、小児甲状腺がんの発病のピークは二回あり、二回とも、放射線被ばくによる人為的なものが原因である。
  • 小児甲状腺がんは、その患者の88%において、他の小児がんの二次がんとして発病し、その原因は、治療中の放射線暴露であった。
  • 放射線被ばくによる甲状腺がんの発病は、非常に長い間影響する(20年以上にわたり、発がんリスクがあり、再発リスクは、40年以上)。
  • 小児甲状腺がんは、通常初診時に、小児の腫瘍の大きさは4cm以上の割合が36%(成人は15%)、1cm以下の腫瘍で発見される割合は、9%(成人では22%) 乳頭がん患者のみに絞れば、1cm以下の腫瘍サイズで診断される割合は、1.5~3%しかなく、進行した状態で発見される。
  • 小児甲状腺がんでは、90%にリンパ節(成人は35%)、7%に肺(〃2%)への転移のケースが多い。
  • 小児甲状腺がんにおいて、転移巣において、特殊な遺伝子の発現、遺伝子の突然変異がよく見られます。
  • 小児甲状腺がんの予後は、非常によく、10年生存率は98.5%。
  • 再発率は、非常に高い。
  • 福島の論文の検証

    ・日本の通常の小児甲状腺がんの発病率が3/100万

    ・福島県において113人(0.04%)が甲状腺がんが発生(3年累計)

    ・福島のケースで、腫瘍サイズが14.2±7.8 ㎜(5.1-45.0 ㎜)、震災当時14.8±2.6 歳(6-18 歳)。

    ・福島のケースで、結節が見つかった患者数は、3990人(1.4%/3年)。

    ・「福島県における小児甲状腺癌治療の実際」第27回日本内分泌外科学会総会 抄録によれば、2014年10月までの症例において、福島県立医科大学で、手術をした症例79件(別に1件良性)で、76例が乳頭がん、3例が低分化がん、腫瘍10mm以下17例(22%)、甲状腺外浸潤44%、リンパ節転移75%、肺転移疑い3例(4%)

    総括

    今回発表された論文は、もともと発表された福島県のデータの発表の仕方の問題もあるのだろうが、やや片手間的な感がします。疫学的な見地も被害の拡大を避けるためには、重要だが、もう少し細部にわたる比較があったほうた説得力はあったのではと思います(おそらく、それは理解されたうえで発表されたのでしょうが)。

    被ばくにより甲状腺がんの増加を説明するのには、やや説得力が欠ける気がします(ABSTRACTしか見ていないですが)。おそらく、経験則的に、検査を精密にすることにより増加する分を見込んでも20-50倍はありえないというのが、念頭にあるのでしょうが、論文としては、もう少し精緻さがあったほうがいい気がします。ただ、実際に、この発生頻度は、感覚的に異常ですので、因果関係は別として、福島県にいれば、甲状腺がんに、他府県にいるよりは高くなるということは、断言できると思います。

    また、甲状腺がんは、長期生存率の高い疾患であり、晩期障害のに関してもよく考える必要がある。国と東電が責任をもって、フォローアップ、晩期障害を最小限にする医療体制の確立に協力することが、求めれることではないかと思います。

    米国調査レポート原文

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    今日の一言

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    で、これ何の宣伝?たぶん、ウォーターサーバーかな。なら、変なものはかわされることはないか。


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