8/26 免疫細胞療法の効果は?
あっちゃんのグリピカン3ペプチドワクチンの投与が始まった。頭の整理をしておこうと思った。そもそも免疫システムによる癌細胞に対する攻撃経路は二種類(細かくはもっとあるような気がしますが、、、)
NK細胞とCTL(細胞傷害性T細胞)の二種類だと思います。NK細胞は勝手に腫瘍を探して攻撃(自然免疫)し、CTLは、腫瘍細胞を他の細胞(樹状細胞)等から教えてもらい、攻撃する(獲得免疫)と教科書的には言われています。
どっちが、はやりでしょうか?おそらく免疫療法とインターネットで検索すると、CTLやあるいは樹状細胞の話の方が多く出てくるような気がします。たぶん、こっちのほうがメカニズムの解明が進んでいるからか、予算の付き方がいいからか、研究が進んでいるような気がします。あっちゃんのグリピカン3ペプチドワクチン療法もこっち、樹上細胞を使ったのもこっち(世の中は悲しいかな、お金の付いたほうが勝ちます。研究も一気に進むし、派手な広告見たほうが本物のような気がしてきます。でもそれが本物とは限りません)
NK細胞はマイナーな存在か、、、、
ところが、今流行の癌治療法に分子標的薬というのがあるのですが、これにNK細胞は結構かかわっています。分子標的薬は、その薬自体のサイズの大きさで、低分子薬(サイズが小さくて、細胞の中に入って作用する)と抗体薬(こっちのほうが大きく、細胞膜の外に取り付いて作用する)に大きく分かれますが、細胞の外側に取り付いて作用する抗体薬(大きいやつ)に関係してきます。
この抗体薬にはいくつかの作用があるのですが、そのうちの一つにADCC(Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity : 抗体依存性細胞傷害)活性というのがあります。これは、癌細胞の表面に取り付くことで、NK細胞の目印になっています。NK細胞も自分で癌細胞を探すといいながら、やはり目印があったほうが楽なようです。
小児がんで、免疫細胞療法といえば、神経芽腫を連想される先生が多いと思うのですが、これは抗GD2抗体を投与する免疫細胞療法で、これは、NK細胞によるADCC活性を期待しているものです(小児がんのテキストには、抗GD2抗体で、ハイリスク神経芽腫患者の5年生存率が有意に改善しているとちらっと触れているだけですが、、、)。
それはさておき、CTLもNK細胞もこれだけ先生方が注目しているので抗腫瘍効果はありそうです、、、しかし今一つどっちも決定打に欠けるのはなぜなんでしょうか、、、、、
CTLの先生方はNK細胞はだめといい、NK細胞の先生はCTLはだめという。お互いの言い分は、大まかに分けるとこんな感じの気がします(あっちゃんぱぱの独断)。
CTL陣営(C陣)
- NK細胞は、活性化・培養が難しく実用的でない。そもそも培養しにくいし、扱いにくいので、研究対象になりにくい。
- NK細胞は、MHC-クラスⅠというたんぱく質(細胞が自分自身という証明書みたいなもの)が発現していないものしか攻撃しない。
- NK細胞の療法は、アメリカで副作用が強すぎて使えなかった。
NK細胞陣営(N陣)
- CTLは殺傷力が弱すぎる。
- CTLはMHC-クラスⅠタンパク質が発現しているものしか攻撃できない(。癌細胞はこれらが消えているものが結構ある)。
- 樹状細胞にターゲットを教え込んでも、CTLがそれを体内で攻撃するかどうかわからない(試験管では攻撃しているようですが、、、)
- CTLが覚えても、癌細胞はすぐ突然変異で、CTLが覚えたのと違うものに変異する。
当たりでしょうか?あっちゃんぱぱのバイアスが入ってますが、、、、あっちゃんのぱぱの解釈では、
C陣の言い分1は、その通りらしいです。学会論文等でもそう書かれてました。これができていない病院がほとんどなので、実用化されていないようです。おそらく、使えるのなら使いたいが、使ってうまくいった実績があまりないので、だれもしない?
C陣の言い分2は、N陣の先生に言わせると、そういうNK細胞もいるが、そうでないNK細胞もいる。NK細胞にもいろいろあるとか、、、、。ある一つのNK細胞が標準形として、一人歩きしているが、実際はいろんな種類があり、MHC-クラスⅠがあっても腫瘍攻撃は可能だとか(ウィキペディア等ではそうはかかれていませんが)
C陣の言い分3は、N陣の先生に言わせると、アメリカの例は抗腫瘍効果はあったが、副作用は確かに大きく、中止された。これを体が許容できるぎりぎりの量に分けて投与すれば抗腫瘍効果を出しつつ、副作用を抑えるという。
逆に、
N陣の言い分1は、その通りのようだ。あっちゃんが受けるグリピカン3を研究する先生も、癌細胞1個に対して、最低10個のCTLが必要とあった。癌細胞って、1立方センチメートルで10億個、直径5センチの球状だと、650億個、直径10センチの球状だと5230億個(球の公式からざっくり計算)。この先生のコメントでも
とある。10億個だと、もし理論通りに作用するとしても1億個未満の癌細胞と戦えるレベルとしても、腫瘍サイズとしては、2ミリサイズ?くらいになる。癌が発見されるのは、大体1センチ四方くらいの大きさになってからであり、腫瘍のサイズがある一定以上になってからではちょっと遅いか?
N陣の言い分2もそういう性質のようだ。
N陣の言い分3は、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。C陣の先生は、CTLの細胞が、腫瘍に入り込んでいるのを確認したとよくいうし、試験管で、CTLが癌細胞を殺傷しているというのもよく聞く。体内で、CTLが腫瘍を殺傷しているかどうかは、??(これは、NK細胞にしても同じですが、、、)
N陣の言い分4も、癌細胞は分裂サイクルが早い(世代交代が早い)為、突然変異が起こりやすいそうだ。だから、厄介な存在だとか。
なんか水掛け論のような文章になってきたが、あっちゃんぱぱの勝手な解釈はこうだ。
- CTLの殺傷力は、たぶんあまり強くない。将棋で例えるなら、”歩”(我ながらいい表現?)だ。癌細胞は、”王”なので、1対1では絶対勝てない。戦力的には、王と歩くらい差はありそう。しかし、歩だが攻撃力はゼロではないので、少しは効きそう。あとは使い方次第か?歩で詰めることも可能であるように、CTLも使い方により少しは効果がありそうな気がする。しかし、将棋で、歩だけで勝つことはできないように、CTLだけではたぶん戦力不足なのだろう。NK陣の先生がCTLは効かないといっていたが、WT1の小児がんの治験で、ハイリスク寛解例の再発をある程度抑えているようなので、まったく効果がないとは思わない、、、が、まともに固形の癌に大打撃を与えることはなく、所詮は歩じゃないかと。
- 逆にNK細胞は、相対的に研究の進んでいない分野である為、情報が少ない。ただ培養が難しいことは確かなようだ。それから、NK細胞1個だけの抗腫瘍効果は、CTL1個よりは強そうだ。将棋でいうなら、飛車・角当たりまでいくかどうかわからないが、飛び回るっているうちに見つければ殺傷するが、なかなか命中しない?視力が良いのか悪いのか腫瘍細胞をうまく見つけられればいいが、うまく見つけられないときはとても時間がかかる。この間に癌細胞の分裂が進めば、結局勝てない。この当たりは、癌の悪性度次第で効き目が変わってくるといったところなのでしょうか?抗体等があれば一気に飛車が成って龍になるか。
- ADCC活性というのも単語だけ一人歩きして、NK細胞やメカニズムについては、あまり多くは語られていないような気がする。本や解説書でも、大体、ADCC活性って、注記で解説されているだけで、本文ではあまり触れられていないかわいそうな存在。
- NK細胞がちゃんと培養できるなら、あっちゃんがいた病院も、白血病の患者に対して、親の血液をとってそれを培養して、子供に移植(ミニ移植というらしいが)する同種NK細胞の移植という免疫細胞療法をしたいとは言っていたくらいなので、したいけどできないといったところかも、、、真実は素人にはわからないけど。
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やっはり、バイアスが入っているので、話半分で、、、。個人的には、NK細胞はちゃんと使えば効くような気がするし、CTLも少しくらい再発防止に役立っていると信じてます(願望)。