2/13 肝切除に必要な技術と肝臓移植に必要な技術
癌の治療において、手術を行う際は、一般的には”腫瘍摘出手術”と言うと思います。当たり前ですが、腫瘍を摘出さえすれば、寛解(治癒)に持って行けるという前提で、腫瘍を切除摘出することを意味します。
肝臓癌の場合は、腫瘍摘出手術と言わず、肝切除手術と言います。肝右葉切除手術とかいった具合に。
ここで、前々から思っていた素朴な疑問なのですが、部分肝切除手術=腫瘍摘出手術なのでしょうか?なんとなく、少し違うような気がするのですが、何が違うのかよくわからないなあというのが本当のところでした。
まず、これを考える前提として、肝臓とは血管が隅々まで張り巡らされた臓器で、その切除とは、如何に出血量を少なくするかがポイントとなるそうです。それから、肝臓は、その部分部分がミニチュア肝臓で、ミニチュア肝臓の単位で、血管の入りと出る部分が完結していて一つの肝臓として、機能するということです。
これを考える際にあっちゃんぱぱが思ったのがミカンと似ているなあという事である。ミカンは、皮をむけば、中は房がいくつもある(通常8-13個らしいです)。このうちの2つの房にまたがって、変なできものが出来ていたとして、どうするのが一番楽(手を汚さずに済むか)かというと、この2つを房ごととってしまうことです。
もし、この房の中の悪い部分だけ取り去ろうとすると、汁でぐちゃぐちゃになってしまう。
これを肝臓に置き換えると、肝臓の一部に腫瘍ができていた場合に、その部分だけ取り去ろうとするとみかんと同じように多量の出血が起こるそうです。慶応大学病院の星野先生の論文でも”出血との戦い”とあります。そして、過去の小児肝腫瘍は、この”腫瘍を切り取る”手術をやってきたそうです。それでは、肝切除はうまくならず、系統的肝切除(=現在言われている部分肝切除)することで、出血量を最小限に抑えた腫瘍の摘出が可能となると言います。
確かに、みかんの房の中のある一部分を汚さずに切り取ることは困難極まりないですが、房ごとなら、私でも出来そうです。たぶん、それくらい?難易度に差があるのかもしれません。肝臓も血液の流れのブロックごとであれば、そのおおもとの所をうまく血さえ止めてしまえば、房ごと切り取るのに近い感じでいけるのかもしれません。
先述の星野先生も、核摘出手術はやってはいけないのではなく、基本的系統的手術ができる外科医がしてもいい術式と述べています。
小児の肝臓関連手術は、肝臓自身の切除手術より、胆道閉鎖症、総胆管拡張症等の手術のほうが多いそうで、肝臓を切る手術は少ないと言います。それでなくても難しい手術で、経験が少ないのであれば、なおさら安全性が高い(=難易度が低い)術式を選ぶというのが、わかる気がします。
その為、表題に関していえば、腫瘍摘出というのは、出血のリスクが大きい為、腫瘍を含めた肝臓の部分単位で出血量が最も少なくなるように切除するのが部分肝切除ということになります。
次に、移植と切除は、手術としては、何が違うか?という点に関してですが、これは当たり前ですが、全然違います。自分の肝臓 or 他人の肝臓を体内に取り込むか、免疫抑制の問題等、全く異なりますよね。
では、執刀医に求められる技術としては、何が違うのでしょうか?移植手術の基礎的な技術とは、血管を繋ぐことだと、熊本大学の猪俣先生がおっしゃっています。部分肝切除は、基本的に、肝臓の切除と血管の血止めが要素技術だとすれば、移植は、これに血管を繋ぐという技術が加わると言います。
特に、胆道を腸につなぐのが、移植のメインイベントで、この細い(2ミリ程度)の血管を髪の毛よりも細いような糸で繋ぐと言います。この時に、20倍の顕微鏡を使って、手術を行うそうです。写真なんかで、ちっちゃいレンズのようなものをつけた医師を見たことはあったのですが、そういうことなのか、、、、とこのHPを見た時に思いました。
移植って、血管を繋ぐことなんですね。これを血管再建というそうなのですが、この技術を自在に操れるようになると、なんでも有りになります(なるような気がします。)血管に腫瘍が一部触れていたとしても一部だけであれば、その部分を血管ごと摘出して、他の部分からの代用やダイレクトにつなぐことで、肝門部に近い腫瘍であっても摘出することができるような気がします(素人的には)。
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ということで、腫瘍摘出、部分肝切除、肝臓移植について、医師の求められる技術の差についてまとめてみました。あくまで、あっちゃんぱぱの独自見解ですので、ご判断は主治医と相談してください。