アメリカの食品添加物は10,000以上!
米国の食品添加物の概要
国内の制度・状況を比較するために、アメリカの食品添加物を少し調べてみました。
(出所:諸外国における食品添加物の規制等に関する報告書/三菱総合研究所)
米国の食品添加物は、CFR(the Code of Federal Regulations. 連邦規則集/eCFR)にて定められており、これを確認することで、概略が把握できます(CFRの日本語訳が、日本食品化学研究振興財団より出ています)。
米国での食品添加物は、日本と異なり、直接(副次的を含む)食品添加物(条文21CFR 172-173)だけでなく、食品を入れる容器、包むもの等の間接添加物(〃21CFR 174-178)も含みます。
また、着色料は、別項目で単独(21 CFR70-74,80-82)で扱っており、後述するGRAS物質にも、含まれません。
米国での2度の大きな制度改革
そして、米国は食品添加物に関する制度を、1958年(1958 Food Additives Amendment)、1997年に大きく変更しています。その結果
1.1958年以前に、FDA(Food and Drug Administration/アメリカ食品医薬品局)が使用が認められていた物質を既認可食品成分としました(21 CFR 181)。
2.1958年の食品添加物規制法の改訂の際に、科学的な検証はないものの、食の経験から一般的に安全とみなされている物質をGRAS物質として設けました(21 CFR 182)。
このリストは、”contain the remnants of a list”ともあり、1958年時点で、既に商用で使われてたが、科学的に検証されていないものに対して、規制による産業への影響を考慮して、使用を許可したリストという意味もありそうです。
3.1958年に当初定められたGRAS物質に関して、科学的検証との声が大きく、1970年代に科学的な検証をして、FDAにより安全性が確認された直接・関節物質を別途、GRAS確認済み物質として定めました(21 CFR 184、186)。
4.1997年にGRAS Notification Programという新制度を導入し、それ以降、FDAは、通知を受理するのみで、GRASの認可にはかかわらなくなりました。
伸び続けるGRAS物質
GRAS物質に関しては、1997年からの制度変更により届出GRASが継続的に増加しており、直近では600近くが届けられていました。(これには、Indirect(容器等に使う物質)も含まれている可能性があるので、割り引いて考えるべき)。これに自己認証GRASを入れると、GRAS物質だけで、2000程度はあるかもしれません。
(出所:先進国における健康食品に関する安全性評価のための調査報告書・未来工学研究所)
日米の食品添加物比較
下図は、日本の食品添加物と米国の食品添加物の中でを数字が把握できた範囲を日本と類似の範囲で色分けをした一覧です。
日本の指定添加物(450種、うち合成香料140種)に近いものとして、アメリカの食品添加物が約220種類程度(香料を含む)あります。
さらに、米国の食品添加物の中で、日本の既存添加物に近いGRAS物質は、現在約1500+α、既認可食品成分は約120種類程度です。このGRAS物質の中には、塩や胡椒といったものまで含まれ、かなり広範囲の添加物と言えます。
※米国の数値は、eCFRの添加物の項目をエクセルにハードコピーして、セルの数を数えるという単純なもので重複や漏れ等もあるかもしれません。
※Foodcom.netの指摘にあるような600種類には、エクセルの数からはなりませんでした。間違っていれば、ご指摘お願いします。
比較をむつかしくする香料の種類
数を比較をする際に、大きな問題となってくるのは、香料の考え方です。国内では、合成香料が140種類(ただし、約3000種類の誘導品、類似品は、18種として計算)、天然香料が600種類あります。アメリカでは、約2600品目(合成香料2300品目、天然香料260品目)と言います。
参考:TPP交渉参加 改めて日米の食品添加物の制度を考える(Foodcom.net)
これらを考慮しても、現状で届出GRAS、自己認証GRASを考慮にいれると、アメリカの食品添加物は、日本よりかなり多いと言えるでしょう。
アメリカの食品添加物は10000以上!?
アメリカでも食品添加物に関して、規制が緩すぎると問題になっているようで、しばしば批判の的になっています。ちなみに、アメリカでは、食品添加物は、通称10000のようです。
10,000+ food additives are allowed in the US. Here are 12 you seriously need to avoid.(10000以上の食品添加物の中で避けるべき12の添加物)
The Group also claimed that of 10,000 chemicals added to food, “3,000 have never gone through an FDA review and for at least 1,000 of these, the FDA has received no notification at all.” This leaves the FDA “completely in the dark.”(10000の食品添加物のうち、3000は、FDAのレビューを受けておらず、1000は、通知すら受けていない。)
この米国での食品添加物10,000以上使われてるという記事ですが、Indirect Food Additivesも入っていると思われるので、実態は6000~7000種類程度(21CFRDirect AdditivesとIndirectの割合を勘案)が使われているといった感じでしょうか?
香料、既存の食品添加物を除いても、1997年以降のGRAS物質だけで3000種類以上もあることになります。ちょっと整合性があいませんので、元の論文をいずれ精査してみます。多くは、次に続くダイエットサプリ関連の添加物と思われますが、、。
栄養補助のサプリは、自己認証GRAS物質満載!?
アメリカはサプリ大国で、数多くの種類のサプリ製品が安価で出回っています。
Gradientというところが、2013年に発行した”Can GRAS Be Used to Support Dietary Supplements?“というレポートで、以下のような指摘がある。
”The GRAS process may offer an alternative path for dietary supplement manufacturers to increase their options and regulatory certainty….scientific consensus is reached, and the ingredient is designated as a food additive….Conversely, if a substance is GRAS and used in a dietary supplement, an NDI evaluation may not be required. In addition, the GRAS process is relatively well defined, and consequently, GRAS notifications have greater predictability and a better success rate than NDI submissions, which only have a 25-30% success rate.
GRASは、ダイエットサプリメーカーに、選択肢と規制上面での切り抜けやすさを増やすことになるかもしれない。新しい成分を使用するときに、ダイエットサプリとして、 Dietary Supplement Health and Education Act (DSHEA)へ申請しても、ダイエットサプリ以外は使えないが、GRASとすれば、ダイエットサプリ用として、新たにDSHEAに申請する必要がなく、また、GRASの場合、科学的に安全であるというコンセンサスさえ得られれば、添加物として使える。DSHEAへの新しいダイエットサプリの申請が認められる割合が25-30%であることから、GRASを選ぶほうが、経済的でもある。
GRAS物質もダイエットサプリに積極的に使用されているようで、皆がありがたがって使用しているサプリは、実は、安全かどうかのチェックを受けておらず、忌み嫌われる自己承認GRASの食品添加物の塊ともいいますから、皮肉なものです。
まとめ
日本の食品添加物の制度が異なる為、比較は困難ですが、1997年以降、届出GRAS、自己認証GRAS等、FDAの検査なしで、食品添加物が使えるようになり、急速に増加傾向にあるため、注意が必要なようです。
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その他参考にしたWEB
Guidance for Industry: Frequently Asked Questions About GRAS
GRAS Notice Inventory
AIBMR
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